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桜夜風 夜分遅く、携帯電話に着信があった。今日は星が、とても綺麗だから。そんな内容のメールだった。三ヶ月前私に、「ごめんなさい」て言ったひと。 この間、その時の彼女と別れたって聞いた。正直、ざまみろって思った。私だったら、そんな哀しい思いさせなかったのに、って。根拠も無いのに。 星は、確かに綺麗だった。一等星の白い光が、目を貫いて、はっとするくらいに。 「ねぇ、今から、ちょっと出ておいでよ。」思わず私は、そう返信していた。綺麗なのは、星だけじゃなくて。 今日は星が綺麗。その言葉に、私を選んだ彼に会いたかった。何を考えて、そんなメールを打ったのだろうか? 特に意味なんて無いのかもしれないけれど、私は大層嬉しかった。黄色い月も、人工の光に照らされた散りかけの桜も、それだけで綺麗だった。まだそこに気持ちがあるんだね、って、紫なら言うだろうか。 今から?返信で、彼は言った。そう、今から。随分唐突過ぎる誘いだったかな。私は、少し反省した。会って何か、話したいこととかがある訳じゃないけど。考えないことにした、そんなことは。ぶ、ぶ、携帯電話が、短く震えて着信を告げる。 「15分くらいしたら、行けますよ。」 予想通り。嬉しかった。でもちょっとだけ、後悔みたいにちくりと刺さった。わかってて言ったくせに。そうそう、人の誘いを断る人じゃ無いってこと。 やめた方が良い。期待してしまうよ。心の何処かで、誰かが言った。何で、って、思わないんだろうか。それとも、そこに打算はあるのだろうか。 「じゃあその頃に、いつもの二階で会おう。」 私は、そう返信していた。皆で、よく遊んでいるたまり場。やめた方が良いって言われたって、今更やめることなんて出来なかった。ちょっと散歩するだけだ。彼はあくまで、友達なんだから。けれど。 今日は星が綺麗。黄色い月も、散りかけた桜も、何もかも。本当に綺麗に見えた。だけど言い訳にしか聞こえなかった。クローゼットを開ける。 散歩なんて到底似つかわしくない程、真剣な顔でそうする私がいた。 |