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不確定童話 その天使の羽根はとても奇妙で、白い羽根の隙間から、幾本ものボルトやナットが覗いていた。ひらひらした白いシャツに、蝶ネクタイ。片方の眼が真っ白で、さっき見た指輪のキャッツアイみたいだと思った。その表情は泣いているようで、笑っているようで。 天使は、私を待っていたんだと言った。雨の中、私を待っていたんだと言った。黒い髪から、滴り落ちる滴。だから、泣いているように見えたのかもしれない。病弱な子供みたい、痩せっぽちの天使。 手を差し出した。古いオルゴールを持ってた。木の箱のささくれが刺さって、流れる血は赤くて。 夢を、見せてくれるんだと言った。見たこともない懐かしい、綺麗な夢を。それは素敵なことなんだろうか?天使は、オルゴールの蓋に手をかけた。 雨は間違いなく降り続いていた。傘が欲しいとは思わなかった。オルゴールは開いても、音を鳴らさなかった。ただ静かに、私たちを閉じ込めた。天使は笑っていた。ネジが回る。ゆっくりと回っている。 どれだけ濡れても、不思議に冷たいとは思わなかった。視界だけが、白く霞んでいった。何処まで見渡しても、誰もいないように見えた。それがあのオルゴールの夢なんだなと思った。何処までも続く、静かな、細い雨。 全ての境界は、曖昧に溶けていった。そうして、いつまでも沈んでいた。白く煙る風景の向こうに、微かに、澄んだ音が響いた。霧雨が、幾重にも重なる。 |