君の溶けた涙が、目から溢れた。







見つめた空っぽの手のひら



「ねぇ」
繋いでいた手を、未だ握り締めた君が呟いて。


「も、逢えないの?」
俯いたまま、君は言った。


「会えないなんて言ってないよ。」

僕は答える。


「ただ、今までと同じ名前で呼ばなくなるだけで。」


君は自由に振舞ってくれたらいい。

好きなフリも、大切そうにもしなくていい。


奔放な笑顔で僕を振り回す君が好きだった。




作り笑顔で装う君は見たくないの。



ふさぎ込めた空が、泣き出しそうで泣かない。




「それは、別離とは何が違うの?」


さぁ
違わないのかも知れない。




「貴方が私の名を呼ばないのなら」

「同じように、手を伸ばさなくなるのなら」



「それは喪失ということだわ。」




視線を落として、繋がれた指先を見つめた。



確かに、僕にはきっと出来ない。


また屈託無く笑う君に微笑みかけることなんて。

何事も無かったように、手を挙げて名前を呼ぶことなんて。



「…あたしの所為なのね」


ぽつりと、囁かれた言葉のあまりに冷めたのに顔を上げた。

つい、と 擦るように翳めたくちびる。



「好きだったわ」


もどかしく苛立つような。


「愛してなかったのかもしれないけれど、好きだった。」


手が離された。

ぱたりと、僕の手が落ちる。



『さよなら』



「またね」



身を翻し、消えてゆく君。



亡羊と、僕はその背中を見ていた。





後悔

と、呼ぼうか。



如何して気付いてしまったのだろう。

君の目の端に、光が不自然に映えた。




届かない。

もう、手を伸ばしても 届かない。



間違えたのだろうか、僕は選択を。

けれどその背中は 再び手を伸ばすにはあまりに遠く


最期に告げられた君の告白を最期まで聴くことの出来なかった僕は、
手を伸ばす資格に自信を持つことが出来ず



結局、嗚呼こんなにも望んでいるのに踏み出せないのは所詮望んでなどいないということか。







泣き出しそうで泣かない空が、僕の上で鈍く蠢いた。

伸ばせない、手のひらに残像。




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