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今年の大学祭の1日目は、雨降りだった。 野外模擬店の人たちは気の毒だな。そう思ったけれど、ちゃんと屋根があったから、そうでもなかったのかも知れない。でもやっぱり、客足に影響するんじゃないかとか。 しかし、いざ傘を差して行ってみたら、ひしめき合う傘の花がはっきり言って邪魔なことこの上なく、模擬店の屋台で狭くなった通路は、進むのも困難なほどの人出だった。 皆そんなに大学祭好きなのか。私も今はそのうちのひとりに違いないのに、人ごみを眺めながら、少しあきれた。 さて、まずは何処から攻めよう。 農学部の直売所を横目に見て、とりあえず受付でパンフレットを貰った。 でもこのパンフレット、野外模擬店の配置書いてないんだよなあ。行くしかないか。百聞は一見にしかず。自分で歩いて見るに越したことは無い。 「カレーうどんいかがですかー?」 「留学生直伝の餃子、日本と全然違いますよー!」 「たこ焼き食べて行かない?」 「焼きそば、美味しいよー!」 見た目は、あんまり良くない。というかあの鯛焼きは、他の屋台で売っていたら経営者に怒鳴られるだろう。10個100円のプラコップに入れたコーンフレークとホイップクリームを、パフェと言い張れるのは、恐らくここだけだ。でも、愛しいんだなあ、これが。学園祭って感じがする。時々、タコスとか沖縄そばとか、面白いものも売ってる。 工学部が、トラの着ぐるみを着て風船を配っていた。ちょっと欲しい。見たら、にっこり笑った顔と工学部のロゴがプリントされていた。わざわざ作ったんだ…。 丁度お昼時でお腹が空いてきたので、ソースの香りに誘われて、たこせんの屋台に並んだ。よくコンビニやスーパーで、1袋100円くらいで売られている袋菓子シリーズの、えびせん。ソースを塗って、揚げたこ焼きを並べ、再びソースとマヨネーズ。最後に、青海苔と踊る花かつおちゃんで仕上げた一品だ。高々学生の屋台風情に列を作るとは、ソースは強い。 けど実際、1人前にたこ焼きは6つ。えびせんとのコラボは絶妙で、なかなかどうして、そいつは美味しかった。 ちょっと落ち着いて食べようと思って、屋台裏になった人工池のほとりに腰を下ろした。相変わらずの曇り空だったけれど、雨は大分止んでいた。 「あー、工学部の方、盛り上がんねぇなー」 「どうするー?」 「遠いもんなぁ」 ふと横を見たら、トラが愚痴をこぼしていた。トラも大変なんだな。そう思いながら眺めていたら、向こうも気付いたみたいで、「あ、今、工学部の方でも何かやってるんですよー。良かったら、来て見てくださいね」と言って、風船をくれた。わざとらしい営業スマイルが、可笑しい。 曖昧に笑って受け取ると、トラは立ち去って行った。残された私は、手首に風船を巻きつけて、ぼんやりとたこせんを食べた。 目の前の屋台は焼き芋屋さんか。今日は肌寒いから、この手の屋台はさぞや盛況なことだろう。屋台を覆う半透明なビニールの幕の向こうに、学園祭を楽しむ人たちが見える。 焼き芋に並ぶ人たちの後ろを、最近知り合った男の子が通った。彼の隣では可愛い女の子がはしゃいでいて。 目を上げた。工学部の赤い風船が、厚い雲の垂れ込める空を飛んで行くのを見ながら、私は、膝に落ちたかつお節をぱたぱたと払った。 この作品は、Kouhakuさんからのキリ番リクエストにより、そのものずばり「学園祭」というお題で書かせていただきました。 |